岸基史ゼミ活動日誌

同志社大学経済学部岸ゼミナールです!里山きゃんぱす(奈良)での里山保全活動や物販活動など日々の活動を報告しています!

大事な課題

福井さんのお友達の清水さんから、
福井記事に対して、以下のような、(貴重なコメント)をいただきました。


正直僕は現時点では農業に全く興味がありません。福井にこのブログを見せられて初めて農業の現実を知りました。
ただ、意見としてこのブログのままでは一般人には興味を持つことが難しいように思います。『なぜ今農業が必要なのか』『なぜ大学で農業の研究をする必要があるのか』など一般人からすると、まずそこの部分が分からないので農業というものを自分とは関係のないものと考えてしまうのだと思います。
確かに福井のゼミで研究している事はこれからの時代、必要な事だと思います。しかし、それが一般人レベルにまで還元されないと、ただの自己満足で終わってしまうと思いますし、それではもったいないと思います。
色々、偉そうなことを言いましたが、これは一般人としての素直な意見として捉えていただけたら幸いです。


コメントでレスポンスしようと試みたのですが、
字数がオーバーしてしまうので、
本記事に引用/レスポンスさせていただきます。

ティーチングアシスタントをさせていただいている、中山と申します。
ご自身を、一般人とお名乗りになる清水さんが、「福井のゼミで研究している事はこれからの時代、必要な事」と理解されていることに、救いを感じます。

さて、清水さんは、商学部の大学生と伺っておりますので、まずは、最高学府である、大学の学生としての、清水さんへのコメントから。
ゼミ生個人の興味は別として、岸基史ゼミ全体としてが意図するところは、経済学が前提とする、「土地」「労働」「資本」の三大要素を使って、経済学は、何をどう解釈するのか?を研究するのが、そもそもの課題です。言うまでもなく、余剰農産物・水産物を交換することが、経済活動の原点なわけですが、我々は実際に農産物を「市場」に出荷するわけではないので、いわゆる近代経済学でいう農「業」を行っているとは言えないかもしれません。
また、清水さんが言われる「農業の現状」という点、農業の現状は、経営効率を追求する政策の結果、集約化と機械化が進み、たとえば我々が5人で丸1日かかるような「代掻き」は、トラクター一台(一人)で、1時間もあれば終わります。我々がやっている事は、主流派の「農業経済学」がやっていることではないのです。
先日の、同志社経済学部の公開講演会でサティッシュ・クマールが言っていたように、「土を肥やす技術を知らなければ、いくら最先端の科学を知ったところで、まったく駄目だ」などというのは言うまでも無く、農地の多面的機能も体感することもひとつの課題として、人的労働に徹しているわけです。これは、ゼミで輪読している、エコロジー経済学の権威、ハーマン・デイリーにもつながるところがあります。

さて、一般人としての清水さんへ
ご存知のとおり、わが国の食料自給率は40% あたりで推移しています。日本人が、外国によって、食わせてもらっているのはいうまでもない事実です。そんな中、さまざまな事情によって耕作放棄された田畑が、わが国には無視できない量あるわけです。貨幣経済に徹するあまり、当たり前のように食料を海外依存しているわけですが、まずは、農産物を土地からいただくことを知る事を目的として、また、こうした田畑を、少しでも保全することを目的として活動しています。
高度成長期、バブル経済を経て、農業を含めた高度化した産業を前提とした現代社会(中山の世代を含めて)においては、「田植え」をいう単語さえも知らない大学生が多いと聞きます。経済学部の有名なS教授も、このことに驚かれていました。人は「食わないと生きて行けません」。弥生時代になって、日本人は、安定的に食うために、稲作農業が定着させました。「石油文明」が定着してしまうまでの、歴史的に正常と思われる、人の生業を、われわれはこの活動を通して再考しているわけです。


清水さんが、「一般」ということばをどの次元で解釈されているのか、お会いした事ないので判断しかねますが、岸ゼミのHP、http://www1.doshisha.ac.jp/~mkishi/profile_mkishitoha(f).htmlも一度ご覧になってみてください。このブログはあくまでも、「活動日記」で、これで学問が完結するものではありません。こうした記録を基に、福井をはじめとしたゼミ生が、正しい事を、正しい事として、うまく「一般人」に対して広報する材料提供の場を提供することも、このブログの設置目的のひとつです。福井さんらゼミ生が、うまく「一般人」に対して広報する事もまた、ゼミナールのひとつの課題でもあるわけです。

小生も、なぜ、大学でこんな事をしているのだろうと、活動に参加した初期のころは、疑問に思ったことが多々あります。もっとも、おそらく農的な営みをご存知ではない大学生の清水さんのような方が、『なぜ今農業が必要なのか』『なぜ大学で農業の研究をする必要があるのか』という疑問を持たれるということに対して、その質問に答えることは、大学として必要なことです。その疑問に解決するために、「岸基史ゼミとしての活動」、および、「里山保全の実践経済学」は開講されていると、中山は解釈しています。

「よくわからないが、『とにかく』、活動に参加してみる☆」

それが、岸ゼミのスタンスです。
実際、そこで泥に接して、多くの学生の意識に変化が見られます。
きっと、これは生きる人としての、DNAが知っていることなのでしょう。

ぜひお時間をお作りになって、一度現地にお越しください。

コメントとして、返答させていただきたいことは、
もっともっとあります。
しかしながら、WWWに発信していることを考えれば、
これ以上、ここで書くことは、適切でないと思います。
できれば、また、
ゆっくり、清水さんのお考えを、
お聞かせ願いたいところです。